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SUNDAY哲学: クラブ経営ではない、コミュニティのための音響工学 (Part II)

SUNDAYが「クラブ」にならなかった理由。音、料理、場所がひとつのシステムとして機能するまで。

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Dec 17, 2025
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2F 音部屋

Part Iでは、SUNDAYがどのようにして生まれたのか、その背景と偶然の積み重なりを辿った。Part IIでは視点を変え、この場所がどのように“続いているのか”、に焦点を当てる。

SUNDAYは、音楽イベントを行うレストランではあるが、クラブではない。その判断は、立地条件や騒音対策といった表面的な理由だけでなく、運営の仕組み、音響への向き合い方、そして人との関係性の築き方に深く関わっている。Tsu→氏が語るのは、音量や機材の話だけではない。

なぜこのスピーカーなのか。なぜ毎週イベントを打たないのか。なぜDJにきちんとギャランティを払うことを優先するのか。そこには「場を成立させるための設計」がある。音響、料理、経済、コミュニティ、それらを分けずに考えることで、SUNDAYはクラブ経営とは異なる形で、この街に根付いてきた。その具体的な考え方と判断の積み重ねを、Tsu→氏の言葉から読み解いていく。

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Q: SUNDAYはクラブではない、と強調されています。この区別は運営上、なぜそれほど重要なのでしょうか?

Tsu→ : 美和ちゃんが駅前でアパカバーを経営していた時、騒音の苦情によるストレスがものすごかったんです。警察がしょっちゅう来て「すいません、もうちょっとボリュームを落としてください」って。そのストレスを無くしたいと思っていました。今の場所は、人通りもそんなにないし、前は国道1号線、裏はJRで、一度も警察が来たことはありません。

しかし、主な違いは金銭的、そして哲学的なものです。クラブはクラブ経営だけで利益を上げないといけない。SUNDAYは、レストランという安定した基盤があって、パーティーは週に1回ぐらい「おまけ」としてやっているというスタンスでいます。このスタンスのおかげで、お客さんの敷居も低く保てるし、そして何より、DJたちに適正なギャランティーを払うことができるんです。僕自身もDJだから、ちゃんとしたギャランティーを払うことが重要なんです。

コロナ禍中にオープンした当初は、「クラブ」のレッテルを貼られるのを避けるために、徹底してレストランとして営業していました。美和ちゃんのメニュー、特にレゲエへの情熱と16回も訪れたジャマイカからインスパイアされたジャークチキンに注力しました。

日本らしい玄米付きジャークチキンは格別。

Q: 音響へのこだわりはSUNDAYの大きな特徴です。機材選びで重視している点は何ですか?

Tsu→: SHeLTeRで音響システムやセッティングについて多くを学びました。オープンしてからの4年間で、少しずつ音を良くしていき、完璧なサウンドに近づけています。横浜でこのレベルの音作りをしている場所は少なかったので、多くのDJや地元の人が「こういうお店ができて感謝です」と言ってくれます。

機材に関しては自分達のこだわりの機種をなんとか手にしてきました。例えば、2Fのクリプシュ、ラ・スカーラは、コロナ禍中に友人が手放す必要があり、買い取ったものです。最近では、地下のサウンドシステムを一新し、ブルーノート東京から来たJBLスピーカーを導入しました。これにより、地下と上の階、両方で素晴らしいオーディオセットアップが整っています。

また、電磁波や静電気を排除するために、音響に関する執着レベルの対策を施しています。配電盤には、「貴陽石(きようせき)」と呼ばれる、群馬の山で採れる特殊な石を加工して塗り込んでいます。これはアコースティックリバイブ社が使用している素材で、静電気をギュッと抑えるのに非常に効果的です。この細部にわたる音響エンジニアリングが、最適な音質を保っているんです。

「貴陽石(きようせき)」を刷り込んだ配電盤の扉

音部屋にあるMATÉ 特注DJブース
横浜出身でNY在住のDJ、Takaya NagaseもTsu→とは古くからの付き合い。

Q: 開店から4年が経ち、コミュニティはどのように発展してきましたか?

Tsu→: SUNDAYの根底にある哲学は、「みんなご縁で繋がっていく」ということです。僕たちから積極的にパーティーをオーガナイズすることはなく、「ここで何かやりたいです」と言ってアプローチしてくる人たちを歓迎しています。この有機的な成長は、純粋に口コミによって広がってきました。

今では、20代後半から30代の若い世代のDJが中心となってパーティーを主催しています。多様性も非常に高く、レゲエパーティーもあるし、DJカルチャーもバンドカルチャーも両方できます。友達のサックス奏者である元晴君が、ここでレッスンとして場所を使い、コミュニティを広げる中心的な存在になっていますね。彼はもう本当、ファミリーな感じです。

また、地元のルーツを非常に大切にしています。美和ちゃんは地元の町内会のリーダーなどもやっていて、なんと町内会長までパーティーに遊びに来てくれたりしています。最初は「クラブができた」という噂を払拭するのに時間がかかりましたが、地域を大切にすることで、開かれたスペースになってきました。

お客様が気に入ってくれるユニークな点の一つは、フロアを移動できることです。地下のメインイベントを楽しんだ後、上の階で「アフターパーティー」のように楽しめるんです。フロアを変えられる場所は、あまりないので面白いんじゃないかと思います。

00年代前半(?)、David Mancusoが来日した際にはTsu→氏も手伝いで参加したとのこと。
Paul W. Klipschによるカルトニュースレター「Dope From Hope」をNYのフリーペーパー紙、Love Injectionが初めて出版化。
1994年NYで行われたラリー・レバン40歳の誕生日パーティーの招待状。

SUNDAYは横浜における重要な文化の核として存在している。東京の大箱クラブが縮小し、外国からの客層に占められつつある時代において、SUNDAYは、人との縁と音の卓越性に基づいて築かれた、地域に根差した多様なコミュニティを育むことに焦点を当てており、それはここに集う多くの笑顔が証明してる。ここは厳密なビジネスロジックではなく、音楽が花開く場所を創造するという集団的な信念に基づいて運営されているのだ。SUNDAYは、まるで高度にチューニングされた楽器のように機能している。一見すると実用的でウェルカミングなただのレストランのようにも見えるが、特製の多層サウンドシステムとそれを裏付ける文化層の厚さは、ストイックな愛をもって設計され、コミュニティとアートのための増幅器として機能しているのだ。

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Tsu→による 2025年トップ10レコード

この1年、これらのレコードはSUNDAYで繰り返しプレイされてきた。フロアで試され、長い時間かけて鳴らされ、無理に煽らなくても空間を保てるかどうかを基準に選ばれている。すぐに効いたものもあれば、時間をかけて輪郭を現したものもあるが、いずれも残り続けた曲。

このリストは、2025年にとって本当に意味を持った10枚をまとめたもの。ピークタイム向けの“武器”ではなく、一晩全体の空気を形づくった音楽。ペイウォールの先では、それぞれのレコードがなぜ選ばれたのかを、Tsu→自身の言葉で語っている。

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